~5G環境構築にも役立つ、通信の基本をやさしく解説~
【第1回】電波でデータを送る仕組み ―「一次変調」「二次変調」「OFDM」「OFDMA」「TWT」をやさしく理解しよう
💡 はじめに
スマートフォンや5G通信では、データが空気中を飛び交っています。
スマートフォン、5G、Wi-Fi 6…。
どれも「電波でデータをやりとりする」通信技術ですが、実際にはその裏で
変調方式 や 多重化技術 が緻密に組み合わさっています。
でも、どうやって「0」と「1」のデジタル信号を電波に変えて送っているのか、
あるいは どうやって省電力で通信を続けているのか、
イメージできますか?
今回は通信の“入口”である 「変調(へんちょう)」 と、
この記事では、
通信の仕組みをまったく知らない人でも理解できるように、
「一次変調」「二次変調」「OFDM」「OFDMA」「TWT」を
一つひとつやさしく解説します。
🔷 1. 変調(Modulation)とは?
私たちが送るデータは「0」と「1」のデジタル信号です。
しかし、電波(無線)は“波”の形でしか送れません。
そのため、デジタルの0と1を電波の形に置き換える必要があります。
💬 変調とは
デジタル信号を、電波の「波の形」に変える技術のこと。
3. 一次変調とは?
QAMなどのように、1本の電波(サブキャリア)にデータを乗せる処理を
「一次変調」と呼びます。※1本の電波とは、電波の基準波のことを指します。
複数のサブキャリアをまとめて送る方式(OFDM)は「二次変調」です。
代表的な一次変調方式
方式 | 説明 | 特徴 |
BPSK | 波の位相(向き)を180°反転して0/1を表現 | シンプルでノイズに強い |
QPSK | 4つの位相を使い、2ビットを1度に送る | 標準的な通信方式 |
QAM | 波の位相と高さ(振幅)の両方を使う | 高速通信の主役 |
4. 二次変調とは?
~たくさんの波をまとめて送る~
一次変調で「1つの波」にデータを乗せたら、
今度はそれを 複数の波(サブキャリア)に分けて同時送信 します。
このステップが 二次変調(Multi-carrier Modulation) です。
OFDMが二次変調の代表例
二次変調の最も代表的な技術が OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)
=「直交周波数分割多重方式」です。
⚙️ 2. 代表的な変調方式
BPSK:最もシンプルな方式
BPSK(Binary Phase Shift Keying) は、
波の向きを反転させて「0」と「1」を表すシンプルな方式です。
データ | 波の位相 | 説明 |
0 | 0° | 通常の波 |
1 | 180° | 通常の波と上下が反転 |
ノイズに強く、確実な通信ができます。
QAM:高速通信の主役
QAM(Quadrature Amplitude Modulation) は、
波の「高さ(振幅)」と「向き(位相)」の組み合わせでデータを表します。
これにより、一度に多くの情報を送れます。
方式 | 1シンボルで送れるビット数 | 特徴 | 必要な通信品質(SNR) |
BPSK | 1bit | 安定だが低速 | 約6〜8dB |
QPSK | 2bit | 標準的 | 約10〜12dB |
16QAM | 4bit | Wi-Fi等で利用 | 約18〜20dB |
64QAM | 6bit | 高速通信向け | 約24〜26dB |
1024QAM | 10bit | 超高速通信だが、ノイズに弱い | 約35〜38dB |
高次のQAMほど1回で送れるデータが多く、高速になります。
ただしノイズに弱いため、電波品質(SNR) が良い場所でのみ使用されます。
OFDMの特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
周波数を細かく分ける | 数百〜数千のサブキャリアに分割 |
同時送信が可能 | 各サブキャリアで並列通信 |
マルチパスに強い | 壁反射や遅延にも強い |
高効率 | 電波帯域をフル活用できる |
Wi-Fi 6 や 5G、4G LTE でも採用されています。
OFDMAとは?
~複数の人が同時に通信できるようにした進化版~
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access) は、
OFDMをさらに進化させた技術です。
OFDMが「道路を分ける」だけだったのに対し、
OFDMAは「それぞれの車線を別の人が同時に使う」仕組みです。
OFDMAの効果
項目 | 内容 |
---|---|
同時通信が可能 | 複数端末が一斉に通信できる |
遅延が減る | 順番待ちがなくなる |
IoTに最適 | 多数の小データ通信に対応 |
5GやWi-Fi 6の「多接続」や「低遅延」の仕組みはここにあります。
TWT(Target Wake Time)とは?
~通信を“寝かせて”省エネ化する~
TWTは、通信端末が必要なときだけ起きて通信する仕組みです。
Wi-Fi 6 や 5G IoT端末で省電力化に使われています。
TWTの仕組み
- アクセスポイント(基地局)が通信スケジュールを通知
- 端末は指定された時間にだけ起動して通信
- それ以外の時間はスリープ状態で省電力
TWTのメリットは?
項目 | 内容 |
---|---|
電池寿命の延長 | IoT端末が数年単位で稼働可能 |
通信の混雑を防ぐ | 同時アクセスを整理 |
安定した通信品質 | スケジュール制御で遅延を予測可能 |
第1回のまとめ
技術 | 意味 | 特徴 |
1次変調(QAMなど) | 1本の波にデータを載せる | 通信の原点 |
2次変調(QFDM) | 多数の波に分けて並列送信 | 高速安定性重視 |
OFDMA | 複数端末が同時通信 | 多接続 低遅延 |
TWT | 通信スケジュール化 | 省電力通信が実現 |