製造業のデジタル化が進み、現場の運転管理や機器メンテナンス法は、これまでのデータベース管理から仮想現実VRを利用したプラットホームによる管理に変わりつつあります。2021年の時点ではまだあまり普及はしていませんが、DX化の波に乗ってこれからますます盛り上がるはずです。
目指すのは全自動管理、AIを活用できる統一されたデータ保管
結論としては、将来のAIや巨大プラットホームとの互換が取りやすいようにデータを保管するように組織内のルール化が必要です。
これから変革する環境にある製造業で働く人が、意識すべき事を、工場勤務のエンジニア目線でまとめてみました。
共有サーバーのデータ保管場所を統一しておく
これから業務データをプラットホーム上に入れて管理しようとした場合、既存のデータがきっちり管理された場所にあるかどうかが非常に重要です。
報告書や図面データなどを各個人でバラバラに管理している場合、そのデータを紐付ける作業は途方もなく大変です。
業務データを全て個人のパソコンに保存して仕事をしている人は、そのデータは存在しないのと同じと思った方がいいと思います。
共有サーバーでのデータ管理はフォルダ名とフォルダ構成を必ず統一させること
組織内のルールとして、よく陥りがちなのですがデータの保管場所を決めるだけで終わっている場合があります。人によってファイル名、フォルダー名を好きに付けてしまうので、探す際の手間は一向になくなりません。さらに好きにディレクトリ階層を増やしてしまえば、ファイルが迷子になるかもしれません。
自分の仕事データはキーワードで残す事を心掛ける
ファイル名のルール化をするだけでデータを管理しやすい環境がすぐに整います。
どこに保存してもファイル名に一定のルールを課すだけで組織内のデータは激変します。
例:ファイル名は必ず以下の接頭文字列を使うようにする
- 製造装置関連図書の場合は以下を付ける
- 機器図_
- 配置図_
- 計算書_
- PID_
- FD_
- 購入関係図書の場合は以下を付ける
- 仕様書_
- 見積書_
- 業務図書の場合は以下を付ける
- 連絡_
- 相談_
- 記録_
- メモ_
後でファイルを見返したい時に簡単に検索ができる様になります。
共有する管理ツールにExcelは使わない
Excelは表計算の基本となる四則演算や、データの並べ替え(ソート機能)やフィルタ機能によって誰でも複雑なデータの分析が可能な為、世界で最も利用されている表計算ソフトとして不動の地位を確立しています。
その為、Excelは老若男女問わず、あらゆる世代に使いやすいソフトとして現場では頻繁に使われています。
便利ゆえの無秩序が生まれる
現場の管理者がExcelで業務管理するというのは、管理者本人の好きな書式で管理フォームを作成でき、組織内の皆がExcelに抵抗なく従ってくれる為、一見するとすごく便利なソフトウェアに見えます。
しかし、その管理法や管理の守備範囲は、属人的となり、その管理者の業務範囲内でしか管理しない状況を生みます。当然現場の管理者が自身の部署内でのみ情報共有されることを目的で作っているので、その組織にとっては非常に良いものになるはずです。
しかし、もっと視野を広げて組織間の情報共有をする場合は、どうなるでしょうか?
組織の管理者が好きに管理用のExcelシートを乱立させると、途端に組織間の情報共有は不可能になります。それでも他部署と情報連携をはかりたい為に、管理者同士のナゾのルール化が横行してしまうのは、これらが原因です。
VBAの利用により管理用のツールの陳腐化が進む
Excelのマクロ機能などのVBAで自作ソフトが作れる管理者が現れるとさらに状況は悪化します。
VBAやマクロ機能で作ったExcelシートは、それを作った人がでしか、編集は出来ません(他人でも編集できるがコード解読に時間がかかる)その為、管理者がVBAやマクロ機能でExcelを作ってしまうと、その他のメンバは途中の処理が見えなくなる為、編集したり、拡張することができないまま、そのプログラムを信じて業務をこなす事になります。
そうやって、その業務処理のブラックボックス化が進み、個々の管理者がそういうVBAやマクロ機能で作ったソフト乱立すると、データの連携に向けたVBA編集はかなり難易度が上がります。
また、この管理者個人が好きに仕様を決めて、ツールを作るという行為は、管理者にとっては「手軽に業務効率化が図れるので便利」と思うかもしれませんが、組織としては一時的な改善でしかなく、ほとんどの場合は、陳腐化してすぐに使われなくなります。
なぜなら大抵の場合、会社組織の管理者は、数年で入れ替わります。ある管理者が、管理用のソフトをVBAで作ってしまった場合、後から新任する管理者にとっては、ソフト中身が分からず、融通の効かないソフトになるのです。そうなるとそのソフトの利便性に関わらず、利用を控える様になるはずです。
そういう短命的なソフトばかりが横行して、社内のデータが一向に統一できないなんてことが頻繁に起こっています。
解決策は、管理ソフトの作成をいつでも編集できる組織に任せることである。
管理ソフトの作成は社内のシステム担当などに任せて、現場の管理者が変わっても、ソフトの仕様変更がいつでも出来る体制にしておく必要があります。
その現場管理者が「便利なツール作ったぞ!」と自作の管理ソフトを部下に紹介しても、数年後にはまた違う管理者による自作ソフトの紹介を受けているかもしれません。